ひきこもり

コミュニケーションが持つ意味を、最近よく考えます。

ひきこもっている当事者に、ご両親はこれまでさまざまな声がけをされてきたことと思います。

叱咤激励:「いつまでひきこもっているんだ?」「働いたら?」「頑張れ!」・・・
体調を心配する言葉:「気分が悪い?」「お腹が痛い?」「ゆっくり休むといいよ」・・・
将来の話:「私たちはいつまでも生きられるわけじゃない」「この先どうするつもり?」・・・
何かを勧める:「たまには外で散歩したら?」「一緒に外で食事でもしよう」・・・

いろいろ誘ったり、励ましてみたり、一緒に考えようとしてみたり、叱ってみたり・・・。
そのどれもが現状を変えることにはならくて、悩んでいらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

 メッセージが持つ機能とは?

最近よく考えることがあります。それは「自分の、このメッセージが持つ意味はなんだ?」ということです。

メッセージはコンテンツ(内容)とコンテキスト(文脈)によって規定されます。
言葉そのものが持つ意味と、それが語られる状況・表情・仕草・行動などによって伝わるメッセージが決まるということです。
例えば親が子どもを叱る時の「バカ!」と、恋人同士が戯れ合いながら口にする「バカ♡」は、同じ「バカ」という言葉でも、相手に伝わるメッセージは全く違うものになります。

これを自分に当てはめると、ひきこもっている当事者に訪問してお話しする時に
「あなたはそのままでいいよ、あなたの気持ちや考えを受け入れますよ」というような言葉(コンテンツ)を伝えても、ひきこもっている当事者を訪問しているという状況(コンテキスト)自体が伝えるメッセージは「ひきこもっている状況を変えて外に出て活動してほしい=あなたはそのままではいけない」であり、コンテンツとコンテキストに矛盾が起きているわけです。

この矛盾を、ひきこもっている当事者はよく感じ、わかっていらっしゃるので「口では何といってても、お前はどうせ私を変えようとするんじゃないか?」ってなります。そりゃ混乱したり警戒したりしますよね。

だから最近は「私はあなたの気持ちや考えを受け入れるし、あなたの人間性はそのままでとてもいいです。ただあなたの今の状況が変わったなら、あなたは今よりもっと楽しかったり、嬉しかったりすると思うので、どうしていけばいいのか一緒に考えていきたいと思っています。」というようなことを伝えるようにしています。

これならコンテンツとコンテキストに矛盾はないですし、ひきこもっている当事者を混乱させることもないと思うのです。

 コミュニケーションの悪循環を考える

お互いにメッセージをやり取りすることがコミュニケーションですよね。
このコミュニケーションがひきこもっている当事者とご両親でうまくいっていない間は、(最初の話に戻りますが)現状が変わることはないと考えています。
うまくいっていない時間が長いということは、それを維持しているコミュニケーションがあり、何かお互いの間で悪循環が起きているということです。

コミュニケーションはメッセージのやり取りで成り立っているわけですから、メッセージの質が変わればコミュニケーションの質が代わり、そのことが現状に変化を起こすかもしれません。

なので「ご両親が、ひきこもっている当事者が伝えるメッセージのコンテンツ、コンテキストはなんだ?」ということを考えながら、それぞれからからお話を伺うようにしています。
そしてお話を伺っているのですが、話しているご本人でさえ、無意識で、わかっていないことが多いのですから、まして他人である僕が理解するのは難しいなぁと思っています。

こういった悪循環が見られる場合の面談は、お互いが持つメッセージの意味を理解し、コミュニケーションに変化が起こせるような提案や、悪循環が何なのか一緒に考えていくようにしています。

※写真は、門に植えたリトルジェムの花が咲いたので撮影。

関連記事