ひきこもりの方をサポートする時の前提として、いくつか意識していることがあります。そのうちの一つが
ひきこもりとは状態であり、病名ではない
ということです。
これは厚生労働省や内閣府からも指針として出ている内容ですが、単に「ひきこもりは精神病ではない」というメッセージだけではなく、別の視点も与えてくれると思います。
ひきこもりとは状態である
ひきこもりとは状態であるわけですから、そうでない時の状態もある(あった)わけです。
ということは「ひきこもり状態」と当事者は分けて考えられるべきであり、いうなれば「ひきこもり」という幽霊が当事者に取り憑いている(例え方としては適切ではないかもしれませんが・・・)わけです。
つまり「ひきこもっているのは当事者にそうなるだけの原因がある」ということではなく、何かしらの作用によって発生した「ひきこもり」という幽霊がそこにいて、当事者はその幽霊に取り憑かれて困らされている被害者だという視点があってもいいということです。
これはナラティブセラピーでいうところの「外在化」なのだと思うのですが、この視点を持っておくことで当事者とのコミュニケーションの質がかなり変化すると感じています。
例えば
①「どうしてひきこもってばかりで仕事をしないんだ!」
というコミュニケーションが親と子どもの間であったとしましょう。
この言葉がけは「ひきこもりの原因は本人の中(甘えとか怠け)にある。だから本人を厳しく叱咤しないといけない」という考えの現れです。
もし子どもが幽霊に取り憑かれた被害者だと考えたらどうでしょうか。
②「ひきこもっていて(幽霊に取り憑かれていて)何か困っていることはないか?」
③「ひきこもっている状態から抜け出す(幽霊を退散させる)にはどうしたらいいか一緒に考えよう」
という言葉がけになってもいいのではないでしょうか。
①と②③には決定的な違いがあります。それは親と子どもの立ち位置です。
①は親と子どもが対立的に向き合っています。 ② ③ は「ひきこもり」という幽霊に対して状況を変化させるため協力的に向き合っています。図にするとこんな感じです。
こんなコミュニケーションが現在の状況を変化させるきっかけへとつながるかもしれません。
少なくとも親も子もお互いに、随分と気持ちが楽になるのではないでしょうか?
大切なのは「変化」です。「変化」についての考察は ブログ:「ひきこもりの方をサポートする時に考えていること」 をご覧ください。またコブルでこの「外在化」の考えを取り入れた面談をする場合は、さらに様々な質問を通してご本人と一緒に考えていきます。
ひきこもりは状態であり、病名ではない。深い言葉ですね・・・。