ひきこもりの方をサポートする時の前提 その1 でもお伝えした通り、ひきこもりの方をサポートする時の前提として意識していることがあります。その2つ目が
「ひきこもり」は当事者の要因だけでなく、周辺環境の相互作用(主に家族)で維持されているシステムである
ということです。これは家族療法のシステムズアプローチを「ひきこもり」の文脈で言い換えているだけです。
ひきこもりの状況を変化させていくアプローチを本人に対してだけに限定していると、すぐに行き詰まってしまうことも珍しくなく、できる限り広い視点を持ってのぞむことが大切だと思います。
「ひきこもり」とは相互作用で維持されているシステム
「相互作用」という言葉の意味を調べてみると、このような記述がありました。
① 互いに働きかけ、影響を及ぼすこと。交互作用。
出典 デジタル大辞泉(小学館)
② 物体同士が互いに万有引力や電気力の影響を及ぼし、それぞれの運動状態を変えていくこと。基本的には素粒子にみられる。
ひきこもりの当事者にとって「相互作用」は、主にご家族とのコミュニケーションで起きます。それは「相互」であって一方的に起こることはありません。
一方的に見えるコミュニケーション、例えば「ご家族の声がけに当事者が反応しない」という場合も、それは「反応しない」というメッセージを含んだコミュニケーションです。
当事者がひきこもっているから叱咤激励する、というコミュニケーションをするご家族はよくいらっしゃます。
でも状況は一向に変化していない場合があって、お悩みのことと思います。そこには
「子がひきこもる(原因) から 親が叱咤激励する(結果)」
といったコミュニケーションだけではなく、
「親が叱咤激励する(原因) から 子がひきこもる(結果)」
という原因と結果が逆転したコミュニケーションもまた起きているのです。
つまりひきこもり状態が続いているということは、今まで行ってきた解決努力(叱咤激励、見守り、ご褒美を出すなど)が功を奏しておらず、その解決努力そのものがひきこもり状態を維持している要因になっているということです。
またひきこもりを維持しているシステムの構成員にはご家族も含まれますが、そのご家族の間でも「関係性」と呼べるものがあるはずです。
例えば「ひきこもりの子どもに母が世話を焼き、父は無関心」ということが散見されますが、これは母と子の心理的距離が近く、父が孤立しているとみることができます。このようなシステム内の関係性にも注目していきます。
ひきこもり支援でまず目指すのは、固定化した状況の「変化」です。
こういったコミュニケーションや関係性に、状況を変化させるヒントがあります。
コミュニケーションの方法については 一般社団法人 日本家族療法学会 「家族間のコミュニケーションに困ったとき」 が参考になります。ぜひお子様とのコミュニケーションにお役立てください。
※ トップの写真は、いつか旅行した小豆島からの一枚。