「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉をご存知でしょうか。「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」を意味します。
ひきこもりや不登校のサポートの現場にいると、この言葉が深く刺さります。いつ動き出すのか、このままでいいのか、何が正解なのか。答えのない問いを抱えながら、それでも日々関わり続けることが求められるからです。
これはひきこもりや不登校に限った話ではありません。地震などの天災、世界で起きている紛争。さまざまな場面で、人は答えの出ない状況に直面します。そのとき必要なのは、答えを急いで出そうとすることではなく、答えが出ない状況そのものに耐える力なのかもしれません。
サポートに関わる人たちは、責任感が強く、誠実な人が多いです。だからこそ、自分のサポートに目に見える効果が出ないとき、「自分のやり方が間違っているのではないか」「もっとうまくできるはずだ」と、自分を追い詰めてしまうことがあります。
そういうとき私が大切にしているのが、三つの「薬」という考え方です。一つ目は「口薬」。「大丈夫ですよ」という、安心できる声がけです。二つ目は「目薬」。「あなたのことを見守っています」という態度で示すことです。三つ目は「日薬」。そんな日々が積み重なっていくことで、ゆっくりと回復していくということです。この考え方は、精神科医・作家の帚木蓬生さんの著書「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」(朝日選書)を参考にしています。ひきこもりやサポートに関わる方にぜひ読んでいただきたい一冊です。
これは当事者や家族にとっても、同じことが言えます。答えを得ることを急がず、いつかはうまくいくことを信じて、今自分にできることをする。そして、自分自身をケアする。
今、何かの理由でつらい状況にある方へ。答えが出なくても、今日を過ごせたこと。それで十分だと、私は思っています。
