第9回 アウトリーチについて考える

ひきこもりのサポートにおいて、アウトリーチ(訪問支援)という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。当事者が外に出られないなら、こちらから会いに行く。一見、理にかなったアプローチに思えます。

確かに、アウトリーチが必要な場面はあります。当事者が家族以外の誰かに自分のつらさを理解してほしいと思っていても、外出することへの恥ずかしさや怖さなど、様々な事情が壁になっているとき。そういった場合には、訪問という形が有効に働くことがあります。

ただし、それは本人の了解を得た上でのアウトリーチに限った話です。

本人の了解を得ないまま訪問することには、大きなデメリットがあります。

一つ目は、同居する家族が本人からの信頼を失うリスクです。自宅は、ひきこもり当事者にとって唯一の安全地帯です。そこに勝手に他人を入れることは、その安全地帯を脅かすことになります。結果として、本人が自室から出てこなくなる、自室以外を「他人と会うかもしれない危険な場所」として認識してしまうことにもつながりかねません。

二つ目は、サポーターが当事者からの信頼を失うリスクです。自分のテリトリーに勝手に入ってきた第三者に、良い印象を持つ人は少ないでしょう。ひきこもり当事者とサポーターが初めて会う場面は、信頼関係を築くための大切な機会です。その出会いが、双方の合意のもとで生まれることが、信頼関係を築くための大きなプラスになります。逆に言えば、合意のない訪問はその機会を奪いかねません。

では、本人の了解をどうやって得るのでしょうか。

私たちが大切にしているのは、家族を通じたプロセスです。家族が当事者への声かけや関わり方を変えていくことで、当事者が自宅で過ごしやすくなり、少しずつ心が回復していきます。その変化の中で、会うことへの合意が生まれていくことがあります。

アウトリーチは、当事者が「会ってみたい」と思える状況が整って初めて、本来の力を発揮するものだと私たちは考えています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!