かつて、ひきこもりは「治療が必要な状態」として捉えられることが多くありました。病院に連れて行く、薬を飲ませる、専門家に診てもらう。そういったアプローチが、サポートの中心にあった時代があります。
これを「医療モデル」と呼びます。
医療モデルは、ひきこもりを「異常な状態」として捉え、正常な状態に戻すことをゴールにします。当事者は「治療される側」であり、専門家が正解を持っていて、そこに向かって導くというイメージです。
でも今、ひきこもりのサポートは大きく変わってきています。
2025年1月、厚生労働省は「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~」を公表しました。これは、15年ぶりに策定された支援者向けの新たな指針です。このハンドブックの中で特に重要なのが、「自律」をサポートの目指す方向として明確に打ち出したことです。
「自立」ではなく「自律」。この一文字の違いが、大きな意味を持ちます。
「自立」は、経済的に独立すること、社会に出て働くことなど、外から見える状態を指します。一方「自律」は、自分の意思で、自分らしい生き方を選んでいくことです。就労や登校といった外形的なゴールではなく、当事者自身が自分の人生を主体的に歩めるようになることを目指す。これがハンドブックの核心にある考え方です。
これは「生活モデル」という考え方とも重なります。ひきこもりを病気として「治す」のではなく、その人と環境との関係を「整える」ことがサポートの中心になります。専門家は正解を押しつけるのではなく、その人自身が持っている力を引き出すサポーターになります。
私たちが大切にしているのも、この考え方です。ひきこもりは、その人が弱いから起きるのではありません。その人を取り巻く環境との相互作用の中で現れた状態です。だから、環境を整え、関係を変え、その人が本来持っている力が発揮されやすい状況をつくっていくことが、私たちのサポートの基本にあります。
