ひきこもりのサポートでは、当事者本人よりも先に、家族と話すことがよくあります。でも「家族へのアプローチ」というのは、単に家族から情報を聞き出したり、当事者への接し方をアドバイスしたりすることだけではありません。
家族自身を、サポートの対象として捉えることです。
当事者がひきこもっている家庭では、家族のコミュニケーションが当事者にとって苦しいものになっていることがあります。ただそれは、家族が意地悪だからでも、育て方が間違っていたからでもありません。家族一人ひとりが、自分自身の人生の中で培ってきた、ものの見方や感じ方、人との関わり方が、そのまま当事者への関わりに現れているのです。
だから家族に「こう接してください」とアドバイスすることもありますが、家族自身がどんな家庭で育ち、どんな経験をしてきたかという話を、丁寧に聴くことも行います。
話を聴く中で、家族自身が気づくことがあります。「自分も親から同じようにされてきた」「自分も誰かに話を聴いてもらったことがなかった」そういった気づきが、自分自身の心の傷と向き合うきっかけになることがあります。
その場合はご希望に応じて、家族個別のカウンセリングに移行し、家族自身の問題を丁寧に扱っていきます。
これは決して遠回りではありません。
家族が自分自身と向き合い始めると、当事者への眼差しが変わります。「なんとかしなければ」という焦りが和らぎ、「この子はこの子なりに精一杯なんだ」といった理解が生まれてくる。その変化が、家の中の空気を変え、当事者が少しずつ動き始めるきっかけになることが、とても多いのです。
相談員が当事者に直接働きかけなくても、家族を通じて当事者に届くサポートがある。それがひきこもりサポートの、一つの大切な形だと考えています。
