ひきこもり

お子さんから「話を聞いていない」といわれたら(前編)

親御さんからの相談には

「子どもから【あなた(親御さん)は私の話を聞いていない、私の苦しみがわかっていない】といわれる。話を聞いてあげているし、本人の要望はできる限り叶えているのに、ずっといわれ続けている。親としてどうしたらよいのかもうわからない」

という事例があります。

親御さんもお子さんと同様に、考え、悩み、つらい思いをされていることと思います。
お話を聞くと、親御さんができるかぎりサポートされているのがよくわかります。本当に頭が下がる思いです。

さて、このようなご相談があるといつもお伝えすることがいくつかあります。それは

  1. いわれる言葉をそのまま受け取らず、裏にあるメッセージを考えて、言葉にして伝えてみる
  2. できない要望をされたら、他にできることを一緒に考える
  3. お子さんが興奮して話し合いにならない、延々と同じ話を繰り返す時はタイムアウト(一時的に距離・時間を置く)
  4. お医者様だけでなく、行政や民間の支援団体を通して、親御さんもお子様も社会的なつながりを作る

ということです。今回は1、2について考えてみたいと思います。

 

 1. いわれる言葉をそのまま受け取らず、裏にあるメッセージを考えて、言葉にして伝えてみる

あれだけ話を聞いているのに「自分の話を聞いていない」といわれるのは、

自分の気持ちに共感してもらっていない

とお子さんが感じているからだと思います。

「あの時、〇〇だった」といった過去のつらかった話をされた時に「そうなんだ、わかったよ」と言葉を返すより、
「そうなんだ、あなたはとてもつらかったんだね」と、お子さんが感じている(と思われる)気持ちを伝えてみてください。

そして気を付けたいのがその後の言葉です。
絶対に「でも」とか「そうはいうけれど」といった説教に聞こえるような言葉をつなげず、ただお子さんから出てくる次の言葉をじっと待ってみてください。

×「そうなんだ、あなたはとてもつらかったんだね。でもそれは過去のことだから、今をどうするか考えよう」
○「そうなんだ、あなたはとてもつらかったんだね・・・。(次の言葉を待つ)」

お子さんと一緒に現状を変える話し合いができるようになるには、まずはお子さんの気持ちを充分に受け止めてあげる必要があります。気持ちに共感しつつ、話をしっかりと聞いてあげてください。

 

 2. できない要望をされたら、他にできることを一緒に考える

お子さんから「あなた(親御さん)のせいで自分はひきこもっているのだから・・・」とあれこれ要求してくるケースがあります。買い物ついでにちょっと済ませる程度の要求ならよいのですが、

  • 今すぐに入院させてほしい
  • あなた(親御さん)の顔をみたくないから家から出ていってほしい(あるいは一人で暮らしたい)
  • あなたの(親御さん)せいで苦しい思いをしているので賠償金(高額、少額にかかわらず)を払って欲しい

といった「すぐには実現できない」あるいは「受け入れられない」要求をされることがあります。

このような要求をされるとつい「そんなことできるわけがない!」「人のせいにするな!」と強くいってしまいがちです。あるいはこのような過度な要求をなんとか実現しようとして、親御さんが疲れ果ててしまっています。

ここでのポイントもお子さんが感じている(と思われる)気持ちを考えることです。例えば

  • 今すぐに入院させてほしい(ぐらい、自分はつらい思いをしている)
  • あなた(親御さん)の顔をみたくないから家から出ていってほしい(あるいは一人で暮らしたい)(ぐらい、自分は苦しい思いをしている)
  • あなたの(親御さん)せいで苦しい思いをしているので賠償金(高額、少額にかかわらず)を払って欲しい(ぐらい、自分のことをわかって欲しい)

といった具合です。

つまり「つらい・苦しい気持ち」を解消するため、自分なりに考えた方法で訴えていると理解してみてはいかがでしょうか?その方法がたまたま親御さんが受け入れられない方法であったということです。

であれば「つらい・苦しい気持ち」に共感する言葉を伝えた上で、どうしたらその気持ちを解消できるか、別の方法を考えようというコミュニケーションが生まれると思います。例えば

「それぐらいつらくて苦しいんだね。〇〇という理由でそれはできないから、あなたの苦しさが軽くなるように別の方法を一緒に考えてみよう」

といった声がけができるのではないでしょうか?

 

 うまくいかなくても、大切なことがある

とはいえ、こういったコミュニケーションがいつもうまくいくとは限りません。むしろうまくいかないことの方が多いと考えておくと、気持ちが楽になります。
共感する言葉を伝えているのに通じない、別の方法を考えようと提案しているのに話を聞いてもらえないといったことはよくあります。

大切なのは共感的なコミュニケーションを続け、積み重ねていくということです。

その上で、うまくいかない場合はどうするのかを後半で考えたいと思います。

変化とは急に起こる場合も起こらない場合もあります。でもゆっくりと良い方向に進んでいます。

今までのコミュニケーションでうまくいかないのなら、新しいことを試してみる価値はあるのではないでしょうか。

後編はこちら ⇨ お子さんから「話を聞いていない」といわれたら(後編)

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